不死身伝説は本当?クマムシ驚異の仮死能力
最強生物クマムシ!絶対零度や宇...
「老化」と「癌」。生物にとって避けて通れないこの2つの難題に、ほぼ完璧に近い形で打ち勝っている生物がいます。それが、アフリカに生息する奇妙な姿のげっ歯類、ハダカデバネズミです。
なんと、彼らは人間と比較して100倍も癌になりにくいという驚異的な特徴を持つことが分かっています。なぜ、こんなにも癌になりにくいのでしょうか? その秘密は、彼らの身体に隠されていました。
ハダカデバネズミの体内に大量に含まれる、ある物質が鍵を握っています。それは、ヒアルロン酸。実は、このヒアルロン酸、普通のヒアルロン酸とは大きく異なる特徴を持っているのです。
人間のヒアルロン酸よりも分子量が5倍も大きい、超高分子ヒアルロン酸なのです。この超高分子ヒアルロン酸が、細胞同士の密着を防ぎ、癌細胞が無秩序に増殖するのを抑制していると考えられています。さらに驚くべきことに、研究室レベルでは、このハダカデバネズミのヒアルロン酸を除去すると、癌になりやすくなるという実験結果も出ています。
豆知識:ハダカデバネズミの寿命はなんと30年以上!これは、一般的なネズミの約10倍の長さです。
近年、ハダカデバネズミのリボソーム(タンパク質合成工場)に、さらなる癌耐性の秘密が隠されていることが明らかになりました。リボソームは、DNAの情報をもとにタンパク質を合成する重要な役割を担っていますが、その過程でエラーが起こることがあります。このエラーによって異常なタンパク質が作られ、癌化につながるケースがあるのです。
しかし、ハダカデバネズミのリボソームは、この翻訳エラーを驚くほど効率的に防ぐ能力を持っていることが判明しました。翻訳エラーの発生率は、一般的なマウスのリボソームと比較して約10分の1という驚異的な数値です。
つまり、ハダカデバネズミは、ヒアルロン酸による細胞レベルの防御に加え、タンパク質合成段階での厳重なチェック機構によって、癌の発生を徹底的に抑え込んでいるのです。
ハダカデバネズミが癌になりにくい秘密は、単一の要因によるものではなく、複数の驚異的なメカニズムが複雑に絡み合って実現されていることが分かりました。高分子ヒアルロン酸と高精度なリボソーム。この2つの要素が、彼らを驚異的な癌耐性を持つ生物にしているのです。
ハダカデバネズミの研究は、人間の癌治療に新たな光を当てる可能性を秘めています。彼らはまさに、「生きた癌研究の宝庫」と言えるでしょう。